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「夢去リぬ」ではなくて
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ありのままを認める
結婚とは、かくのごときものだとすれば、それでは、どうしたらよいでしょうか。方法は、ただ一つ。新たな人間関係を、なるべく早くりっぱに作り上げることです。
それを逆に、恋愛、婚約時代の関係を維持しようとし、そういう関係がくずれ去るのに抵抗するのは、よくありません。早い話が、恋愛時代に見ていたロードショーは、二本だてや三本だての映画館に転落。銀座のレストランは、アパートの近くのソバ屋のラーメンへ。しかし、これは当然なことなのです。
話題も、甘い愛のささやきに代わって、特売場の掘り出しもののことになったりします。ここで、夢もムードもなくなったと思ってはいけません。恋愛時代の見はてぬ夢をいつまでも追うものではありません。わが家の貯蓄計画のこと、出産と育児のこと、そういう新しい夢を、二人で育ててゆかなくてはなりません。
夢のベールが一枚ずつはがされてゆくのを惜しむより、二人いっしょの城を築く喜びを味わうことです。新しい愛情を育てる「結婚は人生の墓場なり」と言った人があります。「恋愛は美しき誤解、結婚は痛ましき理解」などと言う人もあります。そんなことはありません。「結婚は、この世のよきもの」です。しかし、結婚を恋愛の墓場とする覚悟をもつことは必要です。
結婚生活において、恋愛時代のようなバラ色の毎日がつづくはずはありません。喜んだり悲しんだり、ケンカしたり、いたわったり、種々さまざまなことがあって、そしてふけゆく秋の夜など、夫は読書、妻は編み物、ふと顔を見合わせて、「夫婦ってよいもんだな」という感慨が無言で通じ合うような。
そういうのが、ほんとうの夫婦というものです。結婚して、それまで持ち合っていた愛情が一度大きく揺り動かされ、それがおもむろに再び結晶して凝固していって、やがて、ゆるぎのない夫婦愛というものが形成されるのです。
新婚第一年は、その重大な変動期です。この一年間で、あなたは、失望と満足、空虚と充実の問を、時計の振子のように行き来することでしょう。そして、そういう過程の中から、あなたは、新しい愛情を育てる賢明な「生活の知恵」を学びとってゆかなくてはなりません。
ありのままを認める
では、その「生活の知恵」のうち、重要なとをいくつか見てゆきましょう。 まず、相手と自分とのありのままを正当に認識すること。相手には美点もあれば欠点もありますが、自分にもまた長所も短所もあります。その全部を、とにかく一応、承認してかかることから出発すべきです。
欠点や短所を放置せよというわけではありませんが、相手に改善させたり、自分を改善したりしようと、最初からあまり張り切るのは、かえってよくないのです。
突っ放した言い方のようですが、どうせこの世には、映画や小説に登場するようなすばらしい夫婦などありはしません。いずれも平凡なカップルです。平凡な男女が愛し合い、結ばれて、せいいっぱい人生を生きる、それでよいではありませんか。平凡な人間どうしのやること,ですから、失敗や挫折はいくらもあるに違いありません。しかし、それにいちいち神経をとがちせていたら、キリがありません。
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